無理なく安全に!介護初心者にも分かりやすい移乗・移動介助の基本
2018/09/27
5種類の基本動作を組み合わせて行う「移乗・移動介助」
日常生活を送るうえで必要な基本動作は、「寝返る」「起き上がる」「立ち上がる」「座る」「歩く」の5種類です。この基本動作の介助を組み合わせることで、複雑な移乗・移動介助を行うこともできます。
移乗・移動介助で気をつけること
・ご高齢者の身体能力をよく知り、ご自宅の環境にも配慮しながら介助します。
・転落・転倒などの危険を予測して、事故を防ぐことが大切です。
・介助前はもちろん、動作のたびに必ず声かけをします。
・ご高齢者を動かすというより、介助者が動いて誘導しながら一緒に行動します。
・上記のボディメカニクスを活用しましょう。
基本動作の介助方法とポイント
1,寝返る(体位交換) ~仰臥位(仰向け)から側臥位(横向き)<全介助>~

着替え・オムツ交換・シーツ交換の時などに行います。特に寝たきりの方の場合は、褥瘡(床ずれ)や血行障害等を防ぐためにも、寝返り(体位交換)介助が必要です。
①介助者は寝返りする側に立ち、ベッドに片膝をつきます。
②ご高齢者の両膝を片足ずつゆっくりと立てます。
③ご高齢者の両腕を胸の前で組んでいただきます。
④無理のない範囲で頭を少し上げて、顔(視線)を寝返る側に向けていただきます。
⑤膝と肩を支えながら、ゆっくりと寝返る側(手前)に引きます。
■寝返り(体位変換)のポイント
・膝を曲げる・腕を組む・頭を上げることで、支持基底面(ベッドとの接地面積)を狭くします。
・寝返る側に顔を向けることで、重心を移します。
2,起き上がる ~ベッド上で仰臥位(仰向け)から端座位(ベッドの端に座る)<全介助>~

お食事や入浴、排せつなどのために離床するときに必要です。ベッドからの起き上がり介助では、ベッドからの転落に十分気をつけましょう。
①まず寝返る方向の反対側にご高齢者の身体をずらし、腕をつけるスペースを確保します。
②起き上がる側に寝返り介助(上記1)を行い、ご高齢者の身体を横向き(側臥位)にします。
③介助者は、ご高齢者がベッドの端に座った際に身体を支えられる位置に立ちます。
④介助者の腕をご高齢者の首の下から差し入れ、もう片方の腕はご高齢者の膝に添えます。
⑤ご高齢者の両足(膝から足先まで)をベッドからおろします。
⑥ご高齢者を上半身を起こし、ひじ立ちの状態になるようにします。
⑦てこの原理を意識し、臀部を軸にして頭が孤を描くように起こします。
⑧ベッドの端に深く座ったら(端座位)、倒れないように支えます。
■起き上がり介助のポイント
・ご高齢者との間に適度なスペースを作り、ご高齢者の動きのじゃまにならないように気をつけます。
・車いすに移乗する場合は、予め車いすを適切な位置にセットしておきます。
3,立ち上がる・座る ~端座位(ベッドの端に座った状態)から車いすへの移乗<全介助>~

移動に車いすを使うときに必要な動作です。車いすは、ベッドの側面に対して10度〜30度(ご高齢者の状態に応じて角度を変える)の角度で設置し、必ずブレーキをかけてフットサポートを上げておきます。片麻痺(かたまひ・へんまひ)がある場合は、車いすを健側(麻痺がない側)に設置しましょう。
立ち上がる
①ご高齢者の両足が床につくように臀部をずらし、浅めに座っていただきます。
②ご高齢者の両腕を介助者の肩へまわしていただきます。
③介助者は足を大きく開き、腰を低くし、両腕をご高齢者の背中にまわします。
④介助者の肩を高齢者の胸に合わせ、前傾姿勢で立ち上がっていただきます。
座る
⑤介助者は車いすに近い方の足を軸足にして、車いすに向き合うように方向転換します。
⑥ご高齢者にアームサポートをつかんでもらいながら、ゆっくりと浅く座っていただきます。
⑦介助者は車いすの後ろ側へまわり、ご高齢者の両わき下から腕を入れます。
⑧ご高齢者の上半身をやや前傾させ、少し引き上げるように手前に引きます。
⑨フットサポートを上げて、ご高齢者の両足をのせましょう。
■車いすへの移乗のポイント
・車いすのシート(座面)とベッドが同じくらいの高さになるように調節します。
・方向転換するときには、ご高齢者の無理のない姿勢で少しずつ足を動かしていただきます。
4,歩く ~足腰の筋力が弱っている方・歩行が不安定な方の歩行介助~

①介助者はご高齢者の横に立ちます。
②反対側の手でご高齢者の手を下から支えるように軽く握ります。
③ご高齢者の腕や腰を支えるようにしながら、歩調を合わせて、慌てずゆっくりと歩きます。
■歩行介助のポイント
・ご高齢者は動きやすい衣服と滑りにくい靴を選びましょう。
・片麻痺(かたまひ・へんまひ)等がある場合には、介助者は原則として患側(麻痺がある側)に立ちます。
杖(一本杖)歩行の場合

①杖の固定ネジのゆるみや杖先ゴム(チップ)のすり減りがないか、事前に確認しましょう。
②杖(一本杖)は、原則として健側(麻痺や痛みのない側)に持っていただきます。
③介助者は、杖と反対側に立ちます。
④「杖→患側の足→健側の足」の順番で歩いていただきます。
杖の長さの目安
足先から外側に約15cm離して杖先をつき、肘が150°に曲がる長さを目安に調節します。または、立位で腕を自然に下ろしたときの、床面から手首の骨の出っ張り(茎状突起)までの高さを目安にします。
杖を使用して階段を昇降する場合
階段の手すりがある場合は、介助者が杖を預かるなどして手すりを利用しましょう。
杖を使用して階段を上るとき
①介助者は、患側の斜め後方に位置します。
②杖を一段上に出し、健側の足を一段上げ、患側の足を引き上げます。(杖→健側→患側)
杖を使用して階段を下るとき
①介護者は患側の斜め前方に立ち、一段先に下ります。
②杖を一段下に出し、患側の足を一段下ろし、健側の足をそろえます。(杖→患側→健側)
■杖(一本杖)歩行介助のポイント
・杖を選ぶときは、理学療法士などの専門家に相談し、アドバイスを受けましょう。
・転倒予防のために、杖先ゴム(チップ)はすり減ったら交換しましょう。
・杖を健側に持つことで、支持基底面を広くし、安定性を確保します。
・杖をつく場合は、基本的に介助者が杖と反対側に立ちます。
・ご高齢者が右足(左足)を出したら介助者も右足(左足)を出すと、空間ができて歩きやすくなります。
身体機能の維持と向上のために、必要最低限の介助を心がけましょう。できるかぎりご高齢者ご自身の力を使っていただくことは、意欲や自立を高めることにつながります。また、介助が難しい場合は、適切な福祉用具を利用するのもひとつの方法です。
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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