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  • 2022/08/17

生前贈与によるカシコイ課税対策「本当にあったおトクな話」

親子で学ぶ・考える!相続ゼミナール 生前贈与によるカシコイ課税対策「本当にあったおトクな話」税理士 藤川純一 氏

令和4年度は「相続税と贈与税の一体化」についての税制改正はありませんでしたが、
近い将来制度が変更されることは確実とみられています。
この機会にどうすれば効率的な生前贈与ができるか親子で検討してみてはいかがでしょう。

『生前贈与』による相続税・所得税対策 その手法と効果を検証

令和4年度の税制改正では、賃貸経営や相続に関する大きな税制改正はありませんでした。特に、賃貸オーナーに関心の高かった「相続税と贈与税の一体化」については見送られることとなりました。
日本では、相続税と贈与税は原則、別々の課税体系になっており、生前贈与により資産を移転するのか、相続により資産を移転するのかによって税負担が変わってきます。

制度では、大まかにいうと、比較的資産額が小さい層にとっては相続税より贈与税の負担が大きくなり、資産額が大きい層にとっては、相続税より贈与税の負担が小さくなるような税率構造になっています。つまり、資産額によって、資産の移転時期に有利・不利が生じるということです。

これを是正するために、「資産移転の時期の選択に中立的な税制」への改正が検討されてきました。資産を生前贈与で移転した場合でも、相続で移転した場合でも、税負担が同じになるような税制の構築を目指しているわけです。

現制度においても、2500万円までの贈与額については贈与税を課税せず、相続税の計算上、持ち戻して相続税を課税する「相続時精算課税制度」があるにはありますが、相続対策としてはメリットが少なく、活用が進んでいないというのが実情です。

いずれにしても、税制改正の議論は今後も進められ、近い将来に制度が変更される可能性は高いとみていいでしょう。賃貸オーナーの皆さんにとっては、現状を把握し、効率的な生前贈与を考える時期にあると言えます。

貸オーナーの場合、家賃収入によるキャッシュが増えていくことにより年々資産が膨らみ、将来の相続税負担が大きくなる可能性があります。賃貸住宅を生前贈与すれば、収入を移転することができ、相続税の節税、相続税の納税資金対策とすることができます。また、生前贈与は収入を分散することで、所得税対策としても大きな効果を生む可能性があります。

ただし、生前贈与を行うにあたっては、現状の相続税見込額を把握することが重要です。その上で、生前贈与にかかるコストを適切に把握し、効果検証する必要があります。

賃貸住宅の生前贈与事例

不動産所得が高い父から、サラリーマンである息子へ無借金アパートの贈与を行う場合の節税効果を見てみましょう。

現状の所得税

生前贈与後の所得税

生前贈与前後の所得税の差額:531,700円

不動産贈与時の注意点

不動産を贈与すると、贈与税や不動産所得税、登録免許税などの諸税が課せられます。

贈与税

税額を計算する方法は、①「その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の価額を合計」、②「合計額から基礎控除額110万円を差し引く」、③「残りの金額に税率を乗じる」。
賃貸住宅(満室)を贈与する場合の相続税評価額は、その家屋の固定資産税評価額×(1-30%(借家権割合))となります。贈与税負担が大きくなる場合は、複数年で贈与することや、相続時精算課税制度を選択することも考える必要があります。

不動産取得税

土地や家屋を購入するか、家屋を建築するなどして不動産を取得したとき、登記の有無にかかわらず課税となります。
ただし、相続により取得した場合には課税されません。賃貸住宅を贈与する場合は、その家屋の固定資産税評価額×3%が課されます。

登録免許税

売買や贈与、相続などによる所有権の登記、所有権の保存の登記、抵当権の設定の登記、根抵当権の設定の登記を申請する場合などに課せられます。賃貸住宅を贈与する場合は、その家屋の固定資産税評価額×2%が課されます

まとめ

相続税、所得税の節税額だけを見るのではなく、移転により課せられる諸税などのコストを把握し、何年間でそれを回収できるのか、事前に計算しておくことが重要となります。

行政書士 坂本拓也
株式会社マックコンサルタンツ 首都圏本部 本部長
MAC&BPミッドランド税理士法人 常務理事
税理士
藤川 純一 氏

税理士、弁護士、司法書士、社労士等の専門家で構築されるマックコンサルティンググループにおいて、不動産・相続・事業承継を中心としたコンサルティング・タックスプランニングを数多く手がけている。