コンシェルジュブログ
- 2018/04/02
生産緑地とは何か?概要と現状、今後の展望について考える
都市部には「生産緑地」として指定されている農地があります。生産緑地は現在、農地以外の用途で利用することは認められていません。
しかし2022年には、自治体への買取りや、転用・売却ができるようになり、宅地が市場に溢れることが予想されています。
今回は、生産緑地とはどのようなものかを具体的に説明します。
そもそも生産緑地とはどんなもの?
生産緑地とは、「生産緑地法」によって指定を受けている、市街化区域内の農地のことです。
市街化区域にある農地が宅地化しすぎてしまうと、環境が悪化し、農業の衰退にもつながります。この対策として1991年に、都市部の一定の農地を「生産緑地」に指定して、転用に制限を設ける「生産緑地法」が制定されました。
生産緑地とされている農地の条件
- 良好な生活環境の確保に役立ち、公共施設等の敷地の用地に適している
- 面積は500㎡以上
- 農林業の継続が可能
生産緑地に指定されると、転用は認められず、農地として管理しなければなりません。また、下記のいずれかに該当しない限り、指定解除の手続きができません。自治体に報告を求められたり、立入検査等をされる可能性もあります。
指定解除の手続きが可能な条件
- 主たる農業従事者が死亡した場合
- 生産緑地として指定された後30年が経過した場合
生産緑地のメリット
固定資産税の優遇措置
農地の固定資産税は、市街化区域の区域外か区域内かによって、評価方法も課税方法も異なります。
※市街化区域:既に市街化されているか、概ね10年以内に市街化が図られる地域。
※特定市街化区域:市街化区域の中でも、東京都・愛知県・大阪府ならびにその近郊府県にあたる区域。
生産緑地は、固定資産税の優遇措置が講じられており、一般の市街化区域の農地と比べて低い金額となります。
一般市街化区域の農地には、農地とは言っても「宅地並みの課税標準」が適用されるので、非常に高い課税が行われています。これに対し、生産緑地の場合には、「一般農地並み」の課税標準が適用されます。課税評価額の平均と10アール(約1反・300坪)の固定資産税額を比較すると、生産緑地が低いことがわかります。
※平成28年度時点での参考値
相続税の納税猶予措置
相続税の納税猶予措置が適用でき、相続人も農業を終身継続するのであれば、一定金額の相続税の納税が猶予されます。
たとえば、本来の相続税評価額が5億円だとします。納税猶予を選択した場合、相続税評価は相続税路線価ではなく「農業投資価格」にて評価されるため、本来よりも低い評価額になります。これを仮に100万円とします。
この場合の納税猶予の対象金額は「5億円 – 100万円 = 4億9,900万円」となり、評価額のほとんどが猶予対象となります。
注意点として、これは「猶予」であり、相続人が農業を途中でやめると、猶予されていた相続税とそれまでに発生した利子税を納付しなければならなくなります。終身農業を続けた場合に免除となります。
現在の状況は?
引用:都市部における農地面積の推移 | 農林水産省
引用:住宅地価に2022年問題 「生産緑地」が下落要因に|マネー研究所|NIKKEI STYLE
日本全国における生産緑地の面積は14,000ヘクタール程度。もっとも面積が広いのが東京都で、3,000ヘクタールもの生産緑地が集中しています。23区内だけでなく、三鷹市や国分寺市などにも多く分布しています。
東京都についで広いのが京都市で600ヘクタール以上。その他、さいたま市や横浜市、名古屋市や大阪府の堺市など、都市圏に集中しています。
持ち主の状況
生産緑地の指定は25年以上も前に行われており、当時の所有者の多くは高齢の農業従事者として活動しています。
相続されている生産緑地もありますが、生産緑地は主たる農業従事者が死亡すると市町村への買取りが認められるので、相続せずに手放してしまう例も見られます。
今後の需要が見込まれるエリア
将来、生産緑地の買取りが解禁されると、たくさんの土地が放出されることが予想されます。
その際、都心まで電車で1時間以内の場所は需要が高く、価格が下落することが少ないため、買い手や借り手を探すのも難しくならないことが予想されます。
一方、都心部から遠く離れた場所や、郊外のニュータウンなどの駅から遠い場所にある生産緑地は、買い手や借りてを見つけるのが困難なことが考えられるほか、価格の下落など大きな影響を受ける可能性があります。
都市部の状況の違い
生産緑地は三大都市圏に集中していますが、各市町村によって分布状況に違いがあります。
引用:集約型都市形成のための計画的な緑地環境形成実証調査
たとえば埼玉県の川越市は、生産緑地を含めた「緑地面積」が非常に多い場所です。川越市の緑の量は約5,971ヘクタールあり、川越市全体の54.7%にあたります。市街化区域の緑地面積は243.3ヘクタールで、市街化区域面積の7.6%に及びます。
これらの中心となっているのが「生産緑地」で、市街化区域内の緑地の約6割を占めており、川越市内の緑地環境を支えています。
一方、生産緑地制度を採用しない、あるいは、指定に制限をかけている自治体もあります。
たとえば、兵庫県の太子町は、もともと固定資産税が低いため生産緑地指定制度を取り入れても、減税の効果がそれほどなく、あまり導入されていません。
和歌山市は、固定資産税が高額になる地域があるため、生産緑地指定制度を取り入れています。しかし、面積を1000㎡以上、国道に接道していることを条件にするなど、法律よりも厳しい要件を課すことによって調整をしています。
まとめ
生産緑地については、2022年に指定解除の条件である30年が経過するため、減税効果がなくなり、販売規制も緩まることから、市場に大量放出される可能性があり、これを「生産緑地の2022年問題」と呼んでいます。
レオパレス21は生産緑地の有効活用や節税対策についてご相談を受けつけております。
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