1. トップ
  2. ウェブマガジン
  3. コンシェルジュブログ
  4. 相続登記で本当にあったコワ〜イ話

WEBマガジン

ヘッダやメニューをスキップして本文へ直接リンクします

コンシェルジュブログ

  • 2020/02/17

相続登記で本当にあったコワ〜イ話

親子で学ぶ・考える!相続ゼミナール「相続登記で本当にあったコワ〜イ話」 JPコンサルタンツグループ 司法書士法人 山口事務所 坂本拓也氏

レオパレス21のセカンドオピニオンネットワークとして提携・ご協力いただいている各分野の専門家の方々に、「相続」に関して知っておくべきことを分かりやすく解説していただくコーナーです。
オーナー様・ご家族の皆様にとって大切な賃貸住宅経営や資産承継など、毎回テーマを絞ってお話しします。ご家族で一緒に学び、将来について話し合う機会としていただければ幸いです。

相続登記(遺産分割)を放置した結果、相続人の数は250人に!

相続による不動産の名義変更(相続登記)については、相続税申告(相続発生から10カ月以内に申告)のような期間制限がありません。そのため、故人名義のままになっている不動産が少なくありません。その結果、「数次相続(※1)」が起こり、相続人がどんどん増えてしまい、登記の名義を整理しようにもどうにもならないというケースが少なくありません。

その不動産は某地方都市にある500坪ほどの空き地。近隣の自治会や農家のお仲間だったのでしょうか、17人の共有名義として戦前に購入された土地でした。現在その土地を管理している依頼者は、その土地が共有であることは聞いていたものの、共有に至る詳しい経緯は知らず、祖父の代から一家の所有地のように利用してきたそうです。

土地の登記上の持ち分名義は依頼者の曾祖父で、曾祖父→祖父→父→相談者と、土地の管理を引き継いできました。ただ、共有名義であることは承知していましたから、これまでのように土地を独占的に使用していて法的に問題がないのか? できれば名義を自分に一本化したいというご依頼でした。

250人!!

そこでまずは相続人を確定する作業から開始しました。戦前に登記名義人だった17人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集したのです。子どもがいれば、どんどん下に降りていき、子どもがいなければ兄弟姉妹、甥姪をたどり、さらに甥姪の下の代を調査していきます(兄弟姉妹の相続においては「代襲相続(※2)」は甥姪までですが、数次相続についてはさらに相続権が拡大していきます)。

相続人調査にかかった期間は約4カ月、実費(役所に納付する手数料)だけでも100万円近くかかりました。そして判明した相続人の数は、なんと250人!関係資料を確認した結果、民法で規定されている時効取得(※3)の要件を充たしている方々の人数です。その全員に時効取得と、所有権移転のための登記手続きへのご協力をお願いする手紙を送りました。

とはいえ、これだけの人数です。相続人の中には解決が難しい方も少なからずいらっしゃいました。

今回の事例で解決に困難を極めたポイント

① 海外在住者
日本に住民票がなく、実印を持たず、印鑑登録証明書が発行できない。

→日本の印鑑証明書に代わる「サイン証明」という制度があり、在住している国の日本国大使館、領事館での手続きを依頼しました。

② 認知症の90歳
相続人のご家族によれば、相続人は判断能力が全くない状態。
→ご家族の理解を得たうえで「成年後見制度」を利用し、成年後見人を介して手続きを進めました。ただし、成年後見人は判断能力のない相続人の権利保全に努めるため、時効取得により相続の権利を失うことに同意することは立場上できません。そこで、このケースでは裁判を提起して訴訟手続きによって解決しました。

③ 所在不明者
住民票上の住所地に通知文を送ったが宛先不明で戻ってきた。
→相談者が利害関係人として家庭裁判所に「不在者財産管理人」を選任してもらい、不在者財産管理人宛に裁判を提起して解決しました。

④ 協力を断固拒否する方
誠意を尽くして事情を説明しても協力していただけない。
→やむなく訴訟を提起し、その手続きの中で決着を図りました。

すべて解決するまでに4年近い歳月を要し、裁判費用等の実費から謝金に至るまで諸々の経費を含めて総額400万円近くかかりました。ここまで放置しなければ、時間もコストもかけずに解決できたはずです。相続登記を放置した結果の、本当にあったコワ~イ話でした。

※1 数次相続/遺産分割協議が成立する前に相続人が死亡してしまい、第2、第3の相続が発生すること
※2 代襲相続/相続人が死亡していた時にその子や孫が代わりに相続すること。
※3 時効取得/土地や建物を長期間専有している者に、それらの所有権を与える制度。

基礎知識

相続登記とは?

相続登記とは、不動産を相続した際に、相続した不動産の名義を変更する手続きのこと。多くの場合、亡くなった方の法定相続人がその名義を承継することになります。
相続登記には、相続税の申告のように、何カ月以内といった期間制限は設けられていません。不動産の登記名義を亡くなった所有者の名義のままにしておいても、法律上は問題がありません。しかし、放置した場合のリスクは、事例でご紹介したとおりです。

相続登記の手続きは?

通常は、以下の3つのうちのいずれかで行います。

①遺言書に基づいて行う
②遺産分割協議に基づいて行う
③法定相続に基づいて行う

①は、被相続人(亡くなった方)が遺言を残している場合。遺言の内容に従って相続登記を行います。遺言がない場合は、②または③の方法に従います。
③は、法定相続分の割合に従って相続登記を行います。例えば夫が亡くなり、妻、長男、次男が相続人の場合、それぞれの法定相続分は妻2分の1、長男4分の1、次男4分の1です。つまり、この法定相続分の割合に従って相続登記をし、不動産を共有することになるわけです。
ただし、不動産の共有は後々トラブルを生じるもととなりがち。③の方法による相続登記はあまりお勧めしません。

相続登記の費用は?

相続登記料は、不動産の固定資産税評価額の0.4%。例えば、固定資産税評価額が土地と建物を合わせて3,000万円なら12万円かかります。
登記の手続きを司法書士に依頼する場合には、司法書士報酬がかかります。料金はさまざまで、手続きの煩雑さにもよりますが、一般的には10万円前後が相場のようです。

必要な書類は?

以下のような書類が必要になります。

  • 被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの)
  • 被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本一式
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 遺言書
  • 遺言がない場合は遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書(遺言による場合、法定相続分通りの場合、また、相続人が1名の場合は不要)
  • その不動産を継承する相続人の住民票
  • 固定資産評価証明書

空き家での不審火や、景観の悪化など、所有者不明の不動産が問題となっています。国は所有者不明の不動産を少しでも減らすため、2020年度中をめどに相続放棄の義務化政策の導入や、遺産分割協議の期間制限を検討しています。ご自身の周りで心当たりがある不動産がある場合は、弁護士や司法書士に相談し、今後の法改正に備えましょう。

レオパレス21はライフステージサポートを行っています。

税務や相続・資産について様々な疑問を専門家にご相談いただけます。

定例個別相談会 詳しくはコチラ