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  • 2021/07/01

“ぶっちゃけ”法人化はお得なの?~ 知って”得”する税金コラム~

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mokuji

pencil2資産管理会社は作るべき?

『税金対策で資産管理会社を作りましょう!』という話はどこかで耳にしたことはあるのではないでしょうか?いわゆる法人化です。

果たして資産管理会社を作ることが本当に税金対策になるのでしょうか?そもそも税金対策とは何の税金を対策するのか?会社を作るという行為は手段であって、目的にはなり得ません。

会社を作るにはまずは目的を明確にする必要があります。今回は賃貸不動産を保有する場合を前提にして、個人で保有する場合と資産管理会社を作って保有する場合とを比較して、税金効果やその他注意すべき点について整理して行きたいと思います。

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pencil2資産管理会社の税金対策とは?

今回は賃貸不動産を保有する場合を前提にして、個人で保有する場合と資産管理会社を作って保有する場合とを比較して、税金がどうなるのか検討していきたいと思います。

\\ここがポイント!//

個人保有・法人保有の比較検討事項

【1】利益に対して掛かる税金を比較

【2】相続の対策としての活用

 

【1】利益に対して掛かる税金を比較

まずは、不動産を賃貸で運用することによって利益が発生しますが、この“利益に対して課税される税金を比較検討”してみましょう。

 ■個人で賃貸不動産を保有する場合■

 個人で賃貸不動産を保有する場合には、不動産の収入から必要経費を差し引いた利益を不動産所得として確定申告する必要があります。この際に青色申告を選択していれば、賃貸事業の規模に応じて10万円~65万円の特別控除が受けられます。また、確定申告は不動産の収入だけではなく会社からのお給料があれば給与所得として合算が必要ですし、他にも個人に帰属する収入があれば全てまとめて確定申告が必要になります。

所得税の確定申告では、家族構成に伴って発生する扶養控除や配偶者控除、その年に支払をした医療費や社会保険料・生命保険料といった所得控除という制度があり、合計した所得から所得控除を差し引いた金額に対して所得税や住民税が課税されます。

所得税は金額に応じて5%~45%まで幅広い税率で課税がされ、住民税は一律で10%で課税されます。つまり、個人では利益に対する税金は所得税と住民税を合計して15%~55%の税率で課税されます。他にも10部屋以上あるアパートを賃貸する場合等には、一定の控除をした後に5%の税率で個人事業税が課税される可能性があります。

 ■資産管理会社として法人を設立した場合■

 資産管理会社として法人を設立した場合には、法人税や地方税等が課税されます。法人で利益に対して課税される税金は種類が色々とあるのですが、全部まとめて整理すると、一般的には800万円までの利益に対しては22%~25%程度の税率が、800万円を超える利益に対しては37%程度の税率が課税されます。実際には自治体ごとに少し異なる税率が適用されますので、法人を設立する自治体の取扱いを確認する必要があります。

ただし、ここは税率だけで単純に比較して良いかというとそういうわけでもありません。資産管理会社を作った場合には、オーナーに対して役員報酬を支給することが一般的です。すると、法人では役員報酬は経費として取り扱われますが、個人では役員報酬は給与所得として所得税が課税されます。給与所得には給与所得控除という制度があるために、個人でも一定の控除を受けることが可能です。ただし、給与を支給する場合には社会保険への加入なども検討する必要もありますし、他にも色々と検討する必要があります。この辺りの詳細は後ほどまた説明します。

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【2】相続の対策としての活用

実は資産管理会社を作ることによる最も大きなメリットはこちらにあります。相続が発生して誰かに財産を引き継ぐことになった時には相続税が掛かります。相続税には基礎控除として、財産額から『3,000万円+法定相続人の人数×600万円』を控除する制度がありますので、財産額がそれより少ない方についてはもちろん検討する必要はありません。いわゆる相続対策の一環として資産管理会社を作る、ということです。

 例えば借入をして資産管理会社を作ることを想定してみます。少し極端な例になりますが、1億円の不動産を1,000万円の頭金と9,000万円の借入で購入するとします。頭金の1,000万円は資本金でも良いですし、個人からの貸付という形にしても問題ありません。9,000万円の借入を30年で返済します。そうしますと30年後には、借入は無くなり1億円で購入した不動産だけが会社に残ります。この会社を設立したときに、株式を最初から配偶者の方やお子さんに権利を移転しておくことで、実質的に不動産の権利を自分だけではなく他の家族に帰属させることが出来ます。

また、法人の役員や従業員に配偶者の方や子供が就任して、一緒にその会社の経営をすることで所得の分散をすることが出来ます。【1】利益に対して掛かる税金を比較にて単純に法人と個人の税金の比較を説明しましたが、実際にシミュレーションをして行くと、単独での税金のメリットはさほど大きくなくて、株式を分散することや、会社を家族一体経営として所得を分散することによって、メリットが受けやすくなります。

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【3】他にも検討することは盛沢山!?

ここまで税金面の話を中心に説明して行きましたが、会社の経営をするということは税金以外にも色々と考えなければならないことがありますので整理していきたいと思います。

 ■会社を設立するコスト■

 まずは会社を設立する際にコストが掛かります。合同会社だと10~15万円ほど、株式会社だと25~30万円ほどのコストが掛かります。単独で経営をするのであれば合同会社で問題はありませんが、家族一体経営を考えるのであれば株式会社がお勧めです。

 ■会社経営の維持コスト■

 会社を維持するだけでもコストが発生します。まずは、必ず掛かるのが法人住民税の均等割という税金です。これが最低でも年間7万円ほど掛かります。更に、源泉所得税・法定調書・償却資産税・確定申告など会社を経営する上で、最低限必要となってくる税務の手続きがありますが、一般的にはこういった手続きを税理士に依頼することになりますので、その報酬が発生します。

 ■資産の移転コスト■

 初めて不動産を買う段階の検討であれば個⼈であっても法⼈であっても移転のコストはほとんど変わりはありませんが、個⼈で保有していた資産を法⼈に移転する場合には、登録免許税・不動産取得税等のコストが余分に発⽣してしまいますので、移転コストも踏まえてシミュレーションが必要です。

 ■社会保険の検討■

 特に役員報酬や給与の支給が無ければ問題はありませんが、役員報酬を支給する場合には原則として社会保険への加入義務があります。例えば会社勤めの方が、自身で資産管理会社を設立して役員報酬の支給を受けることになってしまうと、2箇所で社会保険に加入することになっていまいます。こういう場合には、資産管理会社の給与情報がお勤めの会社にも通知されてしまうことになりますので、トラブルにならないように注意しましょう。また、取締役でも常勤ではないという説明が出来れば社会保険への加入は免れる可能性があります。

 ■将来の設計■

 よくあるのが個人と法人の税率を単純に比較して、個人の所得税率より法人税率が低いからと言って法人に利益を溜めて、資金をプールしようとする方がいらっしゃいます。ただし、法人にプールされたお金はあくまで法人の資金であり個人で自由にしてよいものではありません。一般的には、最終的には退職金として支給を受けた会社を解散させてしまうことが多いですが、退職金を貰うときに個人で所得税が発生すればこれは追加の税負担が発生しますし、退職金についてもいくらでも支給してよいというものでもないので、将来を見据えた設計が必要になります。

pencil2さいごに 

前文にも申し上げましたが、資産管理会社を作るということは手段であり、目的は何なのかということを明確にすることが重要です。そのためには、将来の設計を考えて行くことが必要であり、どのようにお金を使って行きたいのか、どのように財産を残したいのか、ということを決めて行きます。

また、資産管理会社の設立を検討される場合には、必ず税理士の方に相談をされることをお勧めします。この辺りの考え方は税理士によっても千差万別で、税理士であれば誰でも同じ回答が貰えることは全くありません。税理士も人間です。結婚と一緒で自分に合った信頼できるパートナーを見つけて、人や法人を問わずにトータルで将来の相談に乗って貰えるような関係性を作り上げていくことで、資産管理会社を作ることがより意味のあるものになって行くと思います。

image1 (8)アンパサンド税理士法人 山田典正 税理士

point最後までお読み頂きありがとうございました。アンパサンド税理⼠法⼈ 代表の⼭⽥典正です。何度も繰り返しになりますが、資産管理会社を作ることは目的ではなく手段です。どのような将来設計をされて、どのようにお金を使って行くのか、残していくのか。お金は自由を増やして人生を豊かにするために使う物であり、お金に縛られ悩み事が増えてしまったり、自分の人生を狭めてしまっては本末転倒です。しかし、一方で将来の不安やリスクをそのままにしてよいということではありません。管理会社をどうするか検討することがきっかけで、信頼できる税理士を見付けることが出来れば、もしかしたら税金の効果以上にメリットがあるかもしれません。

 

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