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  • 2022/01/13

子世代が考えておきたい相続対策「知って得する話 知らなきゃ損する話」

親子で学ぶ・考える!相続ゼミナール 子世代が考えておきたい相続対策「知って得する話 知らなきゃ損する話」税理士法人JPコンサルタンツ<br /><br /><br />
代表社員 税理士・不動産鑑定士 佐藤 健一 氏

時代の変遷とともに、均分相続(法定相続分)による相続が当然と考える方々が増えています。
そこで今回は子どもの立場から相続対策について考えてみたいと思います。
ご家族で一緒に学び、将来について話し合う機会にしていただければ幸いです。

子どもの視点から考える相続と、検討すべき課題

「円満分割対策」「納税資金準備対策」「節税対策」の3つをもって「相続三大対策」と言われます。子どもの立場から考える相続でも、その重要性は変わりません。とはいえ、節税対策と円満分割対策は相反する方向へ作用する場合もあり、実際の現場ではどの対策を優先し、どの対策を諦めるのか選択の連続といっても過言ではありません。私自身は、目指すべきゴールはバランス感のある「家族全員の全体最適」だと思っています。

えば、家族で話し合いができない場合 ———

親子間で話し合いができない場合の子どもの不安とは、「親が相続の話を何もしてくれない」「親の財産がどれくらあるか分からない」といったものです。実務面でいえば、「納税資金準備対策」と「節税対策」に対する不安がより大きいといえます。特に、親の主たる財産が賃貸不動産の場合には、納税資金や借入金返済が心配になるところです。

また子供同士で話し合いができない場合の不安は、「実家は兄がもらうだろうが、自分もそれ相応のものをもらえるのだろうか」「あの妹は何を言い出すか分からない」といったもので、そこに生前の親の介護問題や将来の墓守問題がからみます。実務面でいうと「円満相続対策」に対する不安がより大きくなります。

「納税資金準備対策」や「節税対策」は、家族仲が良いことが前提です。税理士としては、協力的で前向きな話し合いができる家族に対して、初めて節税方法や現実的な納税方法を第三者の立場から提案することができます。さらに、財産の所有者たる親の協力なしでは遺言作成や生前贈与などの生前対策はほぼ不可能です。また、子供同士が疑心暗鬼の状態であれば、考えることはほぼ財産分けであって、税金対策どころではないでしょう。

相続対策の第一歩は、相続三大対策に照らし合わせて家族間の「悩みごと」について整理すること。そうすることで、何が不安なのか、解決すべき課題は何かが見えてきて、具体的な解決策も自ずと見えてきます。

族で話し合いができる場合 ———

親子、夫婦、子どもたちの仲が良好で将来の相続の話もできる場合には、その時点で「円満相続対策」はクリアしているといえるでしょう。子が留意すべきは、「納税資金準備対策」と「節税対策」。相続税を“支払えるか”、“損しないか”の視点です。そのためには、両親の財産リストを作成し、現状の相続税を試算し、預貯金額で支払えるかを明確にしていくことがスタートとなります。

「相続3大対策」の重要ポイント
① 無理な節税対策を計画しない

子が自分の配偶者や子、孫の世代にまで生前贈与を強要する、住宅取得資金贈与の特例を利用したいがために親主導で子に住宅建築を進めるなど、首をかしげたくなる節税対策もたまに目にします。納税資金準備対策に重きを置き、そこに問題がない場合には、無理のない節税対策に留めたいところです。

② 家族間に秘密をつくらない

特定の子だけに生前贈与する、特定の子だけに遺言があることや内容を伝えるなど、他の家族に秘密のまま特定の家族間だけで相続対策を立てたり、実行したりしないこと。法律上は問題とならなくても、情報の偏りは家族間に心情的なしこりを残すことになります。対策は必ずしも平等でなくとも良いと思いますが、情報はオープンにしておくことが大切です。

③ 節税より人生設計を大切に

税制にはいくつかの特例があり、適用要件を満たせば節税対策はもちろん、納税資金準備対策にも繋がります。例えば、外に出た子の一人が実家に戻り、親と同居している状態で相続を迎えた場合には、「小規模宅地特例」として実家土地の評価額を約100坪まで80%減額して相続税を計算することができます。
ただし、この特例を利用したいばかりに、無理して実家に戻ることには慎重な検討が必要です。節税より人生設計を優先して検討したいものです。

④ 実家を継承しない場合の対策も考えておく

都市部に暮らす子の相続では、親亡き後、実家をどうするのかについて子ども同士で話し合っておく必要があります。実家を処分する場合は、遺産分割方法や複数の特例について専門家に確認し、検討しておくことをお勧めします。

⑤ 税制改正を見越した対策を

税金対策には賞味期限があります。現在の税法で10年先の相続税を試算しても、あくまで参考にしかなりません。2、3年に一度は相続税額を試算し直しましょう。

⑥ 不動産賃貸業は“実務”の承継についても要検討

図1 相続対策

遺産分割でアパートを取り合ったにもかかわらず、数年後には、「お金にしておけばよかった」と嘆くことになるケースも少なくありません。不動産賃貸業の事業承継については、親子で”実務“の承継についても十分話し合っておく必要があります。

行政書士 坂本拓也
税理士法人JPコンサルタンツ 代表社員
税理士・不動産鑑定士
佐藤 健一 氏

1998年、税理士登録
2003年、不動産鑑定士登録
現在、税理士法人JPコンサルタンツ代表社員。その専門性を生かし、不動産税務・相続税に力を注ぎ多くの実績を残す。書籍も多数出版している。