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名画二本立て 名画二本立て

映画のジャンルといえば、アクションやコメディ、人間ドラマ、ミュージカルなどが真っ先に頭に浮かぶが、意外に名作が多い「バディムービー」というジャンルがある。バディとは「相棒」のこと。おもに男同士のコンビが、友情や仲間意識以上の強い絆で結ばれ、その絆がストーリーの核を形成する。恋愛とは一線を画す、どこかクールな関係だが、肝心なときは全身全霊で相手を助ける。そんな状況で、知らず知らず観る人の心をわしづかみにするのが特徴だ。

『明日に向って撃て!』

映画史を振り返り、バディムービーの代表作に挙げられるのが『明日に向って撃て!』。実在した二人組の強盗、ブッチ&サンダンスは、片や頭脳派で、もう片方は銃撃の名手と、キャラクターも対照的。女性とのロマンスもあるが、あくまでも男二人の豪快な生きざまをストレートに描いた点がすがすがしい。犯罪シーンでの連係や、ヒロインを巡る視線の交錯など、男同士ならではの「熱さ」と「繊細さ」が入り交じった絆は感動的!

作品情報

明日に向って撃て!

監督/ジョージ・ロイ・ヒル
出演/ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス
1969年 アメリカ映画 110分

19世紀末に実在した、伝説の列車強盗、ブッチ・キャシディとサンダンス・キッド。ボリビアへ向かう二人の逃避行を、ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードという二大スター共演で映画化。公開当時、アメリカン・ニュー・シネマの最高傑作と評された。

DVD:1,419円+税

ブルーレイ:2,381円+税

販売元: 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント

『まほろ駅前多田便利軒』

一方で、ややユルめの男同士の関係が妙味を醸し出すのが『まほろ駅前多田便利軒』。高校の同級生で、30代になって再会した主人公二人は、つらい過去を抱えながら、便利屋としての日常を送る。小さな事件も起こるが、相手との一定の距離を保ち、さり気なく手を差し伸べ合うこの関係性は、しみじみとした後味を残し、日本型バディムービーの典型と言えそう。

作品情報

まほろ駅前多田便利軒

監督/大森立嗣 出演/瑛太、松田龍平
2011年 日本映画 123分。

直木賞を受賞した三浦しをんの連作短編集が原作。東京のはずれの「まほろ市」で便利屋を営む多田と、彼の家に転がり込んだ行天の日常を描く。瑛太と松田龍平がハマリ役で、TVドラマを経て、続編の『まほろ駅前狂騒曲』も製作された。

DVD:1,620円+税

ブルーレイ:2,160円+税

販売元: Happinet

2作とも俳優の個性が役にぴったりハマったのがヒットの要因。男性と女性で微妙に共感ポイントが違うのもバディムービーの魅力です。

斉藤博昭(さいとうひろあき)

映画ライター/ジャーナリスト。雑誌やウェブ、劇場プログラムなど数々の媒体に映画に関するレビューやインタビュー記事を執筆。Yahoo!ニュースでは「映画フルチャージ!」を更新中。 共著に『映画遺産ぴあ』(ぴあ)など。 翻訳書に『リリーのすべて』(ハヤカワ文庫)など。