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やきものの基本を学ぶやきものの基本を学ぶ

イラスト/服部重行

押さえておきたいやきもの基礎知識。
知っておくと楽しさが広がります。

陶器と磁器

「やきもの」とひと口に言っても、「陶器」と「磁器」では材料が異なります。陶器が陶土と呼ばれる粘土が原料なのに対し、磁器は陶石と呼ばれる岩石が原料。陶器は土の素朴な風合いや手の温もりが感じられ、磁器は焼成後に半ガラス質となるため、なめらかで硬質、高い実用性があります。

色の違いは釉薬

釉薬ゆうやくとは器の表面を覆うガラス質のこと。成分の配合や焼き方でさまざまな色や質感が生まれます。複数の釉薬を組み合わせ、絵付けをすると、より表情豊かになります。「染付」は呉須というコバルト顔料を用いて模様を描き、透明うわぐすりをかけて焼いたもの。「色絵」は本焼きした上に赤、緑、黄、紫などの色絵具で上絵付うわえづけをし、低温で焼成したものです。一方、釉薬をかけず「焼締め」たものは無釉陶と呼びます。

陶器ができるまで

まず、不純物を取り除いた土を練り、粘土にする土作りを行います。次に、粘土をひも状にして巻き上げるひもづくり、手びねり、たたらづくり、型づくり、ろくろなど、さまざまな手法で成形します。そして、乾燥させ、素焼き。染付の場合はここで絵付けをし、釉薬をかけて本焼きを行い、色絵の場合はさらに上絵付を施し、本焼きより低温で釉薬を焼き付けて完成です。

全国の主要なやきものの産地とその特徴

国の主要な産地とその特徴、毎年各地で開催される陶器市を併せてご紹介します。なかには会期中に数十万人~百万人が訪れる大イベントも。混雑する陶器市での基本の服装は、帽子・リュック・履きなれた靴です。掘り出し物との出合いはもちろん、作り手との会話、値段交渉など、その土地の人との交流も楽しみのひとつです。

※陶器市の開催日は予定です。詳細は、各自治体・イベント主催者にお問い合わせください。

  • 1
  • 笠間かさま焼(陶器
  • 茨城県
  • 全国でも有数の陶器の町でありながらデザインも色味も自由、伝統にとらわれない多彩さが魅力の笠間焼。毎年約40万人が訪れる「笠間の陶炎祭(ひまつり)」(茨城県笠間市)には200軒以上の陶芸家・地元販売店などが集い、個性豊かな作品が見られます。
    ※毎年GWに開催
  • <笠間焼協同組合>
    http://www.kasamayaki.or.jp/
  • 2
  • 益子ましこ焼(陶器
  • 栃木県
  • ぽってりとした土の温かみが魅力的な益子焼。益子の“顔”ともいえる「益子陶器市」(栃木県芳賀郡)は毎年、春と秋に開催されます。500ものテントが立ち並び、のんびりしていると1日では回り切れないことも。
    ※春はGW、秋は11/3前後に開催
  • <益子町観光協会>
    http://www.mashiko-kankou.org/

益子焼

  • 3
  • 瀬戸せと焼(陶器磁器
  • 愛知県六古窯
  • 日本最古の施釉陶器である瀬戸焼。“せともの(瀬戸物)”の発祥地としても知られています。日本三大陶器まつりのひとつ「せともの祭」(愛知県瀬戸市)は、約200の店が瀬戸川沿いに並び、約50万人もの人出でにぎわいます。
    ※毎年9月第2土・日曜に開催
  • <瀬戸焼振興協会>
    https://www.setoyakishinkokyokai.jp/
  • 4
  • 常滑とこなめ焼(陶器磁器
  • 愛知県六古窯
  • 六古窯の中でもっとも大きな産地として栄えた常滑焼。鉄分を多く含んだ陶土が特徴で、赤褐色でおなじみの常滑焼の朱泥しゅでい急須は、その鉄分がお茶の苦みや渋みをまろやかにするといわれています。
    ※「常滑焼まつり」(愛知県常滑市)/毎年10月中旬の2日間開催
  • <とこなめ焼協同組合>
    https://www.tokonameyaki.or.jp/
  • 5
  • 九谷くたに焼(磁器
  • 石川県
  • 九谷焼は、緑・黄・赤・紫・紺青の5色を基調とした「九谷五彩」など、色絵による装飾が特徴。ビッグイベントである「九谷茶碗まつり」(石川県能美市)には、約50もの特設店が並び、全国から20万人以上が訪れます。
    ※毎年5/3~5/5に開催
  • <九谷焼協同組合>
    http://www.shinkutani.jp/

九谷焼

  • 6
  • 越前えちぜん焼(陶器
  • 福井県六古窯
  • 釉薬を使わず、高温で焼かれる際に薪の灰がかかり、溶けて自然釉となって見事な景色が現れる「窯変」が越前焼の魅力のひとつです。県内外から10万人の人出でにぎわう県内屈指の陶器市「越前陶芸まつり」(福井県丹生郡)があります。
    ※2019年は5/25~27日に開催
  • <越前焼工業協同組合>
    http://www.echizenyaki.com/

美濃焼

  • 7
  • 美濃みの焼(陶器磁器
  • 岐阜県
  • 日本の食器類の生産量の半分近くを占めるとされる美濃焼。1300年以上の歴史を誇り、志野焼、織部焼が代表格です。日本三大陶器まつりのひとつ「土岐美濃焼まつり」(岐阜県土岐市)で、約1㎞にわたって300以上のテントが並ぶ様子は圧巻です。
    ※毎年5/3~5/5に開催
  • <美濃焼くるくる>
    https://www.minoyaki-kurukuru.com/
  • 8
  • 信楽しがらき焼(陶器
  • 滋賀県六古窯
  • たぬきの置物で有名な信楽焼ですが、それ以外にも多種多様な器が生産されています。灰がふりかかってできるビードロ釉と焦げ、土の持ち味を生かした風合いが魅力です。
    ※「信楽陶器まつり」(滋賀県甲賀市)/毎年10月の体育の日を含む3連休に開催
  • <ほっとする信楽(信楽町観光協会)>
    http://www.e-shigaraki.org/
  • 9
  • きょう焼・清水きよみず焼(陶器磁器
  • 京都府
  • 京都を代表する伝統工芸品のひとつ。焼締めの陶器から染付の磁器まで手法は幅広く、現在、京都市東山区・山科区の清水焼団地、宇治の炭山などで生産されるものを清水焼(=京焼)と呼んでいます。
    ※「清水焼の郷まつり」(京都府京都市)/2019年は10/18~20日に開催
  • <京都陶磁器協同組合連合会>
    http://www.kyoyaki.com/index.htm
    <京都陶磁器協会>
    http://kyototoujikikaikan.or.jp/

京焼・清水焼

  • 10
  • 丹波たんば焼(陶器磁器
  • 兵庫県六古窯
  • 現存する日本最古の登り窯はいまだ現役。焼成中の炎の具合で生み出される独特の色と模様、素朴な風合いが魅力です。人気の高い「丹波焼陶器まつり」(兵庫県篠山市)を見たあとは、里山の自然と風情あふれる窯元めぐりを楽しんで。
    ※毎年10月中旬に開催
  • <丹波立杭陶磁器協同組合>
    http://www.tanbayaki.com/
  • 11
  • 砥部とべ焼(磁器
  • 愛媛県
  • 象牙色の温かみのある磁肌と、素朴な染付が特徴。伝統にとらわれず、デザイン・絵柄など工夫を凝らしたものがつくられています。例年行われる「砥部焼まつり」(愛媛県伊予郡)には、日常使いの食器から花器などの工芸品まで、約10万点の砥部焼がそろいます。
    ※毎年春と秋に開催
  • <砥部町観光協会>
    http://www.tobe-kanko.jp/
  • <砥部焼観光センター炎の里>
    http://www.tobeyaki.co.jp/
  • 12
  • 備前びぜん焼(陶器
  • 岡山県六古窯
  • 釉薬を使用しない焼締めの代表格。「窯変」によって生まれる模様は一つとして同じものはありません。「備前焼まつり」(岡山県備前市)は、通常より2割ほど安く買えるとあって毎年全国各地から備前焼ファンが集います。
    ※毎年10月第3土・日曜に開催
  • <協同組合岡山県備前焼陶友会>
    https://touyuukai.jp/

備前焼

有田焼

  • 13
  • はぎ焼(陶器
  • 山口県
  • 約400年の伝統を誇り、高麗茶碗の作風を取り入れた茶碗が焼かれてきました。使うほどに微妙に変化することから「萩の七化け」といわれます。
    ※「萩焼まつり」(山口県萩市)/毎年5/1~5/5に開催
  • <ぶらり萩あるき(萩市観光協会)>
    http://www.hagishi.com/
  • <萩陶芸家協会>
    https://hagi-tougei.sakura.ne.jp/
  • 14
  • 唐津からつ焼(陶器
  • 佐賀県
  • 東は「せともの」、西は「からつもの」と言われ、日本を二分するやきもの産地として栄えてきました。特に茶の湯に用いる陶器は有名。描かれる模様は野趣に富み、土の温もりを感じさせます。
    ※「唐津やきもん祭り」(佐賀県唐津市)/毎年4/29~5/5に開催
  • <旅Karatsu(唐津観光協会)>
    https://www.karatsu-kankou.jp/guide/karatsu/
  • 15
  • 有田ありた焼(磁器
  • 佐賀県
  • 日本初の磁器を生んだ地。透明感のある白磁の上に描かれた染付や華やかな色絵が特徴。主な様式には初期伊万里、柿右衛門、鍋島があります。約100万人もの人が訪れる「有田陶器市」(佐賀県西松浦郡有田町)は、日本三大陶器まつりのひとつです。
    ※毎年4/29~5/5に開催
  • <ありたさんぽ(有田観光協会)>
    https://www.arita.jp/aritaware/
  • <アリタセラ(有田焼卸団地協同組合)>
    http://www.arita.gr.jp/
  • 16
  • 渡佐見はさみ焼(陶器磁器
  • 長崎県
  • つるんとした手触り、北欧デザインを思わせるモダンな意匠も多く、ここ数年、女性や若者を中心に人気が急上昇。「波佐見陶器まつり」(長崎県東彼杵郡波佐見町)には、窯元・商社約150店が集合し、おしゃれな普段使いの器が並びます。
    ※毎年4/29~5/5に開催
  • <波佐見焼振興会>
    http://hasamiyaki.com/

渡佐見焼

  • 17
  • 小鹿田おんた焼(陶器
  • 大分県
  • 一子相伝のもと、300年以上にわたり10軒の窯元によって技術が守られています。「飛び鉋(かんな)」「刷毛目(はけめ)」「櫛描き(くしがき)」と呼ばれる幾何学模様の装飾技法が特徴。国の重要無形文化財にも指定されています。
    ※「小鹿田焼民陶祭」(大分県日田市)/毎年10月中旬に開
  • <おいでひた.com(日田市観光協会)>
    https://www.oidehita.com/archives/304
  • 18
  • 薩摩さつま焼(陶器磁器
  • 鹿児島県
  • 地元では土色の違いから「白もん」「黒もん」と親しまれている薩摩焼。「黒もん」(黒薩摩)は文字通り真っ黒で庶民的。焼酎の燗をつける土瓶型の「黒茶家(くろじょか)」、徳利の一種「カラカラ」が有名です。
    ※「美山窯元祭り」(鹿児島県日置市)/毎年11月上旬に開催
  • <鹿児島県薩摩焼協同組合>
    http://www5.synapse.ne.jp/satsumayaki/
  • 19
  • 壺屋つぼや焼(陶器
  • 沖縄県
  • 沖縄の方言で「やちむん(やきもの)」と呼ばれる壺屋焼。現在の主流は釉薬をかけた「上焼(じょうやち)」で、南国沖縄らしい大胆な色使いのものや魚模様などが描かれた食器が人気です。
    ※読谷村陶器市(沖縄県中頭郡読谷村)/毎年12月中旬の金・土・日曜日に開催
  • <壺屋陶器事業協同組合>
    http://tuboya.com/
  • 六古窯
    六古窯とは、平安時代末期(12世紀後半)に始まり、現代まで続いている日本最古の窯のことです。2017年4月には日本遺産に認定されました。

お詫びと訂正
クラスエルマガジンvol.48冬号に掲載の【暮らしの情報 やきものの基本を学ぶ】24ページの❾京焼・清水焼のルビは「きよみずやき」です。お詫びして訂正いたします。

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