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特集|地図で楽しむ江戸 特集|地図で楽しむ江戸

鳥の目で発見する町の魅力

地図の最大の特徴は、鳥瞰図ちょうかんずであること。地図は私たちに鳥の目を与えてくれます。地図を手に町を歩くと、点から点へと観光スポットを巡るだけでは見えない町の風景が見えてきます。
名もない通りや、空き地や、建物にもふと目が止まり、その由来を知りたくなります。その町を構成し、その町の魅力を作り出しているのは、点ではなく線でつながれた風景なのではないでしょうか。
まして古地図なら、さらに時間軸というもう一つの視点が加わり、時空を超えて想像の世界に遊ぶこともできます。新旧の地図を突き合わせて、昔あったもの、今はないもの、今もあるものと、違いを発見しながら歴史をひもとくのは楽しいものです。

今回、私たちが選んだ古地図は、江戸時代末期に作られた尾張屋版「江戸切絵図」の復刻版。切絵図とは、地域別に作成された区分地図のことで、このうち「本所深川絵図」と「外桜田永田絵図」を持参し、現在の町並みと照らし合わせながら歩きました。

江戸切絵図 七 外桜田永田町絵図

古地図散策の楽しみの一つは、時代劇や歴史小説に登場する舞台にタイムスリップし、描かれている場面の空気感をリアルに感じとることができることです。

たとえば、深川で最初に渡った高橋たかばしは、藤沢周平の時代小説『彫師伊之助捕物覚えシリーズ』の『ささやく河』※1に登場する橋です。

「考えに沈みながら、高橋が見えるところまで来たとき、伊之助は右手の暗い軒下から大きな風のようなものが吹きつけて来たのを感じた。
伊之助を目がけて飛ぶように走って来たのは、風ではなく匕首あいくちを持った男だった。それも二人である」(P.238〜P.239)

襲撃をかわした伊之助は、刺客が落としていった匕首を高橋から川に投げ捨てます。

「小名木川の水は、匕首を呑みこむ一瞬だけ、月の光をはじいて銀色に光ったが、すぐに黒い夜の川にもどった」(P.243)

実際に、高橋を渡り川を見下ろしたことがあるかないかで、このシーンから伝わってくる緊迫感はまるで違ってきます。

藤沢作品からもう一つ。古地図散策ならではの発見に出会える場面があります。『海鳴り』※2「白い胸」の一節です。

「その空を背景に、一の鳥居の黒く大きな姿が、足を踏んばる形にうかびあがっている。(中略)おや? 新兵衛は足取りをゆるめた。一の鳥居の柱の陰に、ひとが四、五人かたまっているのが見えた。地面にうずくまった女を、あまり風体のよくない男たちが、それとなく取り囲んでいるようである」(P.18〜中略〜P.25 )

一の鳥居とは、富岡八幡宮参道の入口を示し、深川遊里の大門でもあった鳥居のこと。今はもうありませんが、古地図には現在の門前仲町の商店街の中ほどに鳥居の表示が記されています。社前の鳥居は実は二の鳥居であることを、古地図が教えてくれます。

古地図散策を楽しむコツとして、山本先生からいくつかのアドバイスをいただきました。最後にそれをご紹介しましょう。

①「お勉強モードになりすぎない」

事前の下調べはある程度必要とはいうものの、町歩きを気軽に楽しむことを何より優先してほしいとのこと。しかも、最初は1時間前後の歩行距離がちょうどいいとも。「じっくりゆっくり」が古地図散策を楽しむコツだそうです。

②土地っ子の生きた情報を最大活用する

たとえば、深川江戸資料館の通り沿いにある土産店「たかはし」の店主は、地元では知らない人はいない有名人。はっぴにちょんまげ姿で店頭に立ち、観光客のあらゆる「困った」に答えています。安くておいしい店も、地元の隠れた特産物の情報も、土地っ子に聞くのがいちばん。そこに暮らす人々との出会いが散策の思い出に彩りを添えてくれます。

③ポジティブな目で楽しむ

「ずいぶんさびれてるな」「昔の面影が全然残ってない」など、友人たちと声高に話しながら町を歩く観光客は、地元の人から歓迎されないと山本先生はいいます。今はない風景を嘆くのではなく、かつてあった風景を想像する、それが古地図散策のマナーだそうです。
江戸切絵図ほど詳細なものではなくても、古地図は全国各地に残されています。まずは自分の暮らす身近な町から古地図散策を始めてみませんか。これまで気づかなかったさまざまな町の魅力に出会えるかもしれません。

  • 1 藤沢周平 1988年発刊 『ささやく河―彫師伊之助捕物覚え』 (新潮文庫) 新潮社
  • 2 藤沢周平 2013年新装版『海鳴り』〈上〉 (文春文庫) 文藝春秋社

復刻【尾張屋版「江戸切絵図」】

復刻【尾張屋版「江戸切絵図」】

広い地域を表示する大型の地図である大絵図に対して、切絵図はある地域の一部分を表示した詳細な地図のことです。何種類かある江戸の切絵図の中でも幕末の嘉永年間(1848〜54年)以降刊行された尾張屋清七版の切絵図は5色刷の豪華さで評判を呼びました。また、特集の地図は、現存する絵図でもっとも保存状態の良いとされる、国立国会図書館の物を元にしています。

(有)岩橋美術 TEL.043-496-7454

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