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特集:路面電車 特集:路面電車

広島電鉄(1000形1001:2013年製造)

路面電車 ーレトロで新しい乗り物ー

ノスタルジーを誘う路面電車。
目にするだけで昭和を懐かしむことができ、時間もゆっくりと過ぎて行くようです。
しかし今、LRT*(次世代軌道系交通システム)の導入により路面電車は再び注目されています。
人々の記憶や歴史を背負い走る路面電車の車輪とレールの軋む音を感じてください。
*Light Rail Transitの略、低床式車両の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた次世代の軌道系交通システム

取材協力/函館市企業局交通部・東京都交通局・豊橋鉄道株式会社・富山地方鉄道株式会社・万葉線株式会社・京福電気鉄道株式会社・岡山電気軌道株式会社・広島電鉄株式会社・伊予鉄道株式会社・とさでん交通株式会社・長崎電気軌道株式会社・熊本市交通局・鹿児島市交通局
文/クラス エルマガジン編集部 撮影/滝澤 敏彦 

進化を遂げた路面電車

日本における路面電車の始まりは、明治28(1895)年に遡ります。京都電気鉄道が開業し、現在の京都駅から伏見区京橋辺りまで、約6kmの運行を開始しました。

伊予鉄道市内電車(モハ50形55:1953年製造)

その後、全国各地で新たな路線が開業し、最盛期である昭和31(1956)年には、全国65都市で82事業者が路面電車を走らせ、総延長距離は1479kmに及びました。当時の一日の利用客は約730万人、まさに「人々の足」となって活躍しました。古い邦画などでよく見られる、銀座を走る路面電車の風景はこの時代のものです。

しかし、高度経済成長によるモータリゼーションの進展で、道路渋滞を誘発する路面電車は徐々に姿を消していきました。現在は19都市で20路線が運行しています。

富山地方鉄道市内電車(TLR0600形0603:2006年製造)

都電荒川線・東京さくらトラム(9000形9002:2009年製造)

このように書くと、路面電車は「消えゆくもの」「昭和の遺物」のように思われる方も多いかもしれませんが、近年では最先端の乗り物として世界的に見直されてされています。

その理由は、地球環境保護への優位性、車両のバリアフリー構造、さらには建設コストの安さなどが挙げられます。路面電車はバスや乗用車に比べて温室効果ガスの排出量が格段に低く、輸送人員も多いというメリットがあります。

また、「LRT(次世代軌道系交通システム)」を導入した近年の路面電車は、停留所の改良などで乗降が容易になり、以前より快適な移動が提供できるようになりました。特に、最新の超低床車両は、地面と乗車口に段差がほとんどなく、高齢者や身体の不自由な方々も安心して乗降できます。

*当時は民営だが、1918年から京都市の運営となり「京都市電」の一部となる

路面電車が彩る街の個性

路面電車は走行距離が短いうえ、ゆっくり走ることから、車両にかかる負荷が少なく、製造から半世紀以上使われることも珍しくありません。

今でも、1960年代に製造された車両が、時代を超えて数多く走っています。

大阪の 阪堺 はんかい 電気軌道で走る電車の中には、昭和3(1928)年製造の「モ161」形が現役車両として健在です。

長崎電気軌道(211形214:1951年製造)

長い年月を走っている路面電車は、線路沿いの景色と共に街の個性を演出しています。現在、路面電車が走る都市は、札幌、函館、京都、広島、長崎、松山など観光地として人気の高い場所が多く、美しい景観の中を走る姿は、まるで絵画のようです。

京福電気鉄道/嵐電
(モボ101形101:1929年製造・1975年車体更新車)

なかでも通称「 嵐電 らんでん 」と呼ばれる京都の 京福 けいふく 電気鉄道は、人気の高い路線です。古い街並みを京紫色の車両が走る姿は、観光客はもちろんのこと、地元の人も大好きな風景でしょう。特におすすめは広隆寺の楼門とのツーショット。まさに「京都の美」を代表する景色と言えます。

熊本市電(8500型8502:1985年製造)

とさでん交通(600形614:1959年製造)

鹿児島市電(9500形9511:1998年製造)

観光資源としてのユニークな電車

伊予鉄道市内線(D2形+ハ31形31:2002年製造)
「坊ちゃん列車」

近年は、各路線でさまざまな試みが行われています。

愛媛県松山市を走る 伊予 いよ 鉄道では、SLスタイルの「坊っちゃん列車」が大人気。ディーゼルエンジンを動力源としており、煙も吹きます。その他の車両はIYOTETSUカラーのオレンジに塗色され、松山市内の景観をより鮮やかに彩っています。

他にも、函館市電の「箱館ハイカラ ごう 」、万葉線の「ドラえもんトラム」、長崎電気軌道の「みなと」など、鉄道ファンならずとも一度は乗ってみたいと思う、ユニークで魅力的な車両が走っています。

なかでも、令和元(2019)年3月に営業運行を開始した岡山電気軌道の「おかでんチャギントン電車」は、テレビアニメの姿そのままで、子どもはもちろん、大人も夢中になるほどです。

函館市電(30形39)「箱館ハイカラ號」
明治43(1910)年千葉県で運行開始。函館での運行開始は大正7(1918)年
※例年4月15日から10月31日までの土・日曜・祝日に営業運行

万葉線(MLRV1000形1004:2008年製造/2019年撮影)
※現在運行の「ドラえもんトラム」車両はMLRV1000形1003です。

今しか見られない新旧の共演

富山地方鉄道市内電車
左(デ7000形7021:1965年製造)、右(T100形T101:2010年製造)

路面電車はLRTの導入により、新たなステージに入りました。富山市ではJR富山駅を中心に、「路面電車を活用したまちづくり」を進めています。

他の路線でも徐々に超低床車両の導入が進められており、昨今では最新車両とレトロな車両が並行運行している姿が見慣れたものになってきました。しかし、いくら寿命の長い路面電車の車両もいつか引退する時がきます。新旧車両の共演を楽しめるのは、今だけかもしれません。

全国の路面電車一覧(2020年9月現在)

都道府県 事業所名(名称) 営業距離 停留場数 車両数 軌間 一日乗車券
北海道 札幌市交通局(札幌市電) 8.9km 24 36 1,067mm 500円
北海道 函館市企業局交通部(函館市電) 10.9km 26 37*1 1,372mm 600円
東京都 東京都交通局(都電荒川線・東京さくらトラム) 12.2km 30 33 1,372mm 400円
東京都 東急電鉄株式会社(東急電鉄世田谷線) 5.0km 10 10 1,372mm 340円
神奈川県 江ノ島電鉄株式会社(江ノ電) 10.0km 15 10 1,067mm 650円
愛知県 豊橋鉄道株式会社(豊鉄市内線) 5.4km 14 16 1,067mm 500円
富山県 富山地方鉄道株式会社 15.2km 37 30 1,067mm 650円
富山県 万葉線株式会社(万葉線) 12.8km 25 11 1,067mm 900円
福井県 福井鉄道株式会社(ふくてつ) 21.5km 25 15 1,067mm 560円*2
滋賀県・京都府 京阪電気鉄道株式会社(京阪電車大津線) 21.6km 27 23 1,435mm 700円
京都府 京福電気鉄道株式会社(嵐電) 11.0km 22 27 1,435mm 800円*3
大阪府 阪堺電気軌道株式会社(阪堺電車) 18.4km 40 34 1,435mm 600円
岡山県 岡山電気軌道株式会社(おかでん) 4.7km 16 22 1,067mm 400円
広島県 広島電鉄株式会社(広島電鉄) 35.1km 78 135 1,435mm 700円
愛媛県 伊予鉄道株式会社(伊予鉄市内線) 9.6km 28 38 1,067mm 700円
高知県 とさでん交通株式会社(とさでん) 25.3km 76 63 1,067mm 500円*4
長崎県 長崎電気軌道株式会社 11.5km 39 72 1,435mm 500円
熊本県 熊本市交通局(熊本市電) 12.1km 35 54 1,435mm 500円
熊本県 熊本電気鉄道株式会社(熊本電鉄) 13.1km 18 8 1,067mm 700円*5
鹿児島県 鹿児島市交通局(鹿児島市電) 13.1km 35 57 1,435mm 600円

*1:営業車両30両・アミューズメントトラム(カラオケ電車)1両・箱館ハイカラ號1両・ササラ電車2両・花電車3両 *2:土・日曜・祝日 *3:嵐電全線+京都バス *4:市内均一区間/500円、軌道全線/1,000円 *5:区間指定1の料金

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